まにわの農家手帖
澤木正俊さん

作成日:2026.4.2 最終更新日:2026.4.22

ぶどう 雇用就農 Iターン

澤木正俊さん

  • #東真産業「花笑み農園」
  • #シャインマスカット・ピオーネなど多品種を栽培
  • #京都・大阪から真庭へIターン
  • #雇用就農という選択
  • #草生栽培で環境にやさしいブドウづくり
  • #「農業を魅力的な職業にしたい」
ぶどう 澤木正俊さん

150アール

圃場を17アールから拡大した現在の栽培規模

113

年間休日(2025年から。2026年は115日予定)

400m

栽培地の標高。寒暖差と土壌がブドウ栽培に適す

Q

農業を始めたきっかけを教えてください

子どもの頃から芋掘りや野菜づくりを祖父や親と体験して、自然のなかで作業するのは楽しいなと思っていました。食べることも好きで、果物狩りにもよく行っていたんです。

そのまま、大学では植物の研究に進み、大学院まで行ったのですが、なんか違うなと。研究だけしていても、なにも生み出さないような気がして。やっぱり身体を動かす方がいいかなと思いました。

卒業後、食品メーカーに就職してからは、家庭菜園をやっていたんです。仕事がら「食の安全」にも興味がわいて、生ごみを発酵させて堆肥にして、野菜を育てて子どもと食べる。そんなことをしながら「定年したら、本格的に農業に携わりたいな」ぐらいの気持ちでいました。

ただ、農業って「儲からない」というイメージが強いですよね。

転機になったのは、高梁市のピオーネスクールに行ったことです。たまたま体験させてもらったら、ブドウづくりがとにかく面白くて。「農業をやるなら、岡山でブドウしかない」と思いました。

でも、そのときは子どもが3人になったところで、「ブドウ農家では養えないな」とあきらめていたんです。

澤木正俊さんのブドウ栽培の様子

Q

それでも農業の道へ進むことになったんですね

 もともと独立就農をイメージしていたんですが、「法人の雇用就農なら、安定した収入があるな」というのは頭の片隅にあって、そんなときに偶然「株式会社東真産業」のブドウ生産の求人を見つけました。

 私は京都で、奥さんは広島の出身。岡山はその中間になります。もともと田舎暮らしにも環境にも興味があって、そういうことにチカラを入れている真庭市はちょっと注目していたんです。

 奥さんも「せっかくだからチャレンジしてみたら?」と背中を押してくれて、思い切って転職することにしました。

Q

東真産業でのブドウ栽培について教えてください

入社したのは、農業部門ができて2年目ぐらいの頃で、当時は社員2名とパート1名という小さな体制でした。

未経験ですから、最初は「なにかよくわからないけど、ブドウをつくっている」みたいな状態でしたね(笑)。先輩に教わったり、たまたまとなりの圃場の方がブドウづくりの有名な名人で、その方に教わったり。毎日勉強でした。

 入社して2年目ぐらいから任されるようになり、栽培方法を変えていきました。「食の安全」に興味があったので、除草剤を使わない「草生栽培」に切り替えていったんです。

 草生栽培というのは、簡単に言えば、草を生かすことで小動物や微生物など、多様な生きものが土壌を柔らかく豊かにしてくれて、そんな土壌で作物を育てていく方法です。

圃場もはじめは17アールでしたが、いまでは150アールまで拡大しています。品種もピオーネとシャインマスカットだけだったのが、直売で売れるよう、いまは多品種のブドウを栽培しています。

東真産業・花笑み農園のブドウ園の様子

Q

独自の栽培方法について詳しく教えてください

カヤ、落ち葉、草、バーク堆肥など、有機物を微生物やキノコが分解して、ブドウの樹がそれを吸収することで味わい深いブドウになります。

少し専門的になりますが、カニ殻エキスで土壌環境を整えて、発酵させたアミノ酸エキスや海由来のミネラルを葉面散布して光合成能力を高める。そうすることによって、大粒で高糖度のブドウになるんです。

 なので、剪定枝や葉っぱも粉砕して畑に戻しています。薪ストーブで使ったブドウの老木や薪から出る灰も、ミネラル分として畑に戻しています。松茸山の不要な落ち葉も活用しています(東真産業は松茸山も管理しています)。

とにかく自然由来の肥料を極力使用して、循環型農業に近づけようとしているのが特徴です。

 借りた畑が標高400mほどの山の上で、鍾乳洞の近くにあるんです。水が貴重な地域で、乾燥しにくいようにカヤを敷いているのですが、それがまたブドウを美味しくしてくれます。

有機物を大量に入れていること、標高が高く寒暖差があること、カルスト地形でカルシウムが豊富な土壌であることなど、条件が重なるブドウづくりには最適な場所でもあります。

草生栽培と有機物を活かしたブドウ園

Q

雇用就農のメリット・デメリットを教えてください

やっぱり会社員なので、定期的にちゃんと給料がもらえるというのは、安定という意味では恵まれていると思います。独立農家さんだと、儲かったときは良いでしょうけど、その反面、病気をしたときなど、きついときもあります。

東真産業は他の部署もあるので、繁忙期には応援をもらえたりします。逆にこちらが応援に行くこともありますけど(笑)、そういう横のつながりはすごくいいですね。設備投資をしたいときも、会社に稟議を通せば資金を出してもらえます。

デメリットで言えば、自分の判断だけでは進められない部分がありますね。

設備を買いたいと思っても、稟議が通らなければできない。その点は独立農家とは違うところだと思います。(ただ東真産業がチャレンジを受け入れてくれる会社なので、よっぽどでない限りはやらせてくれます。(笑))

澤木正俊さんの農作業の様子

Q

現在、新規の受け入れはされていますか?

ちょうどいま、募集をかけようとしているところです。

正直なところ、うちの条件は普通の農業法人としては良いと思います(笑)。年間休日も2025年から113日になって、2026年からは115日になる予定です。住宅手当もありますし、福利厚生もしっかりしています。

東真産業は多角的に経営しているため、農業も他の産業と同レベル水準を求められ、農業にしては働きやすい環境で働けます。

うちで働く子は「農地がないけど、農業をやりたい」という人が来ます。ある程度裁量を任され、色々とチャレンジしたい方には向いていると思います。実務研修の受け入れもしています。

花笑み農園のブドウ栽培の様子

Q

これから農業を志す方へメッセージをお願いします

農業には、作物、つくり方、肥料など、いろんなやり方があって、それによって味や形が変わってきて、農業の面白さがあります。全部自分に返ってきますが、その分働き方も売り方も自由で、やりがいはあると思います。

私は真庭に移住するまえ、満員電車で通勤するような「緑の少ないところ」で生活していました。でもいまは自然豊かな真庭で、家族との時間も取れて、本当に良かったと思っています。

農業は自分でなんでも器用にできる必要があります。要領よく、手際よく作業をこなす必要がある。慣れるまで難しいと感じるかもしれませんが、「ひとつずつできることが増えると楽しい」。そう思える人は向いていると思います。

澤木正俊さんとブドウ園

聞き手・編集 甲田智之
写真 山田和俊