まにわの農家手帖
野尻英晶さん

作成日:2026.4.2 最終更新日:2026.4.2

ぶどう 農業公社 新規就農支援 蒜山

野尻英晶さん

  • #農業公社で16年のキャリア
  • #6年前にブドウハウス建設
  • #ハイブリッド事業で新規就農者受け入れ
  • #GPSラジコン防除器で効率化
  • #健康とやる気が一番大切
ぶどう 野尻英晶さん

3

ブドウが収穫できるまでの育成期間

29

育てているブドウの木の合計

22a

ハイブリッド産地のブドウ圃場の規模

Q

農業を始めたきっかけを教えてください

農業を始めたきっかけは、もともと両親も農業をしていて、私で3代目になりますかね。私自身も農協に16年ぐらい前まで勤めていたんです。その後、「農業公社に入らないか?」って言われて、今に至ります。

ですから、家の農業を継ぐのではなくて、農業公社で農業をしているということになります。私の所属する農業公社は「一般社団法人蒜山農業公社」です。

いくつか事業があるんですけど、なかでも私は、農業公社が持っている農場で「ハイブリッド産地育成※」としてブドウを育てています。

※ハイブリッド産地育成とは、ブドウの安定的な供給体制を整えながら、同時に担い手の育成、さらには新技術および新品種の研究など、複合的に取り組む産地のことです。

ブドウを育てる以外では、農業公社として除雪や草刈り、堆肥センターの管理もしています。ブドウよりも除雪のほうが儲かっているかもしれません(笑)。

蒜山農業公社のブドウ栽培の様子

Q

蒜山といえば高原野菜が有名ですが、なぜブドウだったのですか?

むかしはこのあたりでは寒冷地のため、「ブドウはつくれない」と言われていたんです。でもだんだん温暖化になり、気候が変わってきて、ここ蒜山でも「良いブドウ」がつくれるようになってきました。

さらに岡山県から「試験的に、新規就農者の研修施設も担ってくれないか?」という依頼もあって、ブドウの栽培がはじまりました。

いま、オーロラブラックが18本、ピオーネが5本、シャインマスカットが6本。計29本の木を育てています。規模としては、22a(小学校の校庭程度)。面積で言えば、ひとりでやらないといけないぐらいの規模だと思います。

オーロラブラックが一番多いのは、これが岡山県の奨励品種みたいで「房落ち」しないんです。ブドウの粒を持って持ち上げられるぐらいで、つまり輸送に強いということですよね。岡山県以外ではあまり聞いたことがないかもしれません。

Q

ブドウづくりで苦労されていることがあれば教えてください

さっきお伝えしたとおり、岡山県の依頼ではじまったようなところもあり、もうみんなブドウをつくるなんてはじめてのことで(笑)。何をどうやったら良いのかもわからない。勉強しながら、真庭農業普及指導センター※の先生に教えてもらいながら。いまも教えてもらっています(笑)。

※真庭農業普及指導センターとは、岡山県真庭市にある農業指導・支援機関です。普及指導員が農家に対して環境に優しい栽培方法や新技術の導入支援、経営簿記指導、特産品開発など、農業経営と技術の総合的なサポートを行っています。

苦労していることで言えば、「細かい作業」です。たとえば「房整形」ですね。ブドウの穂の下部から3.5cmを残して、あとの上部は切っていくという作業があるんですけど、これが細かくて。

作業もずっと上向きで、しかも手をあげて房整形みたいな細かい作業をしていく。それがちょっと大変ですね。身長もそんなに高くないので(笑)。

ただ、ここは「ハイブリッド産地」なので新技術の導入があるんです。水やりもね、いまは「曜日・時刻・散水時間」を設定したら、あとは勝手に水を撒いてくれます。

その分、注目されています。視察も県内外から来られますし、このあいだは地元ケーブルテレビで1年間密着してくださって。「良いブドウをつくらないと」という思いはあります。

ブドウ栽培の様子

Q

蒜山は冬、雪が積もりますけど、ブドウは大丈夫ですか?

大丈夫ですね。雪が積もる前に、ブドウの木にかかるビニールを全部取ります。雪に潰されないようにです。その後、圃場に雪は積もりますが、ブドウの木はぜんぜん大丈夫です。3ヶ月間、雪のなかにいても問題ありません。

そのあいだ、「蒜山農業公社」としては堆肥センターで堆肥をつくったり、除雪の仕事をしたり。そうそう、「蒜山農業公社」の堆肥を入れたら、もっと甘いものができると思うんです。

Q

新規就農の希望者も受け入れをされているんですね

はい、多くは岡山県や真庭農業普及指導センターから「ブドウしませんか?」みたいな募集が出るらしくて。それを見た希望者さんがここに来られます。

真庭市には、お給料をもらいながら農業の勉強をして、やがて独立するという仕組みがあります(※)。その受け入れ先のひとつに、ここ「蒜山農業公社」が入っています。私たちと一緒にここでブドウの勉強をするわけです。

ブドウはどうしても収穫できる木に育つまで、3年はかかります。ですから行政の仕組みなどを利用して、ブドウをつくってもらえたらと思います。

※真庭市には「農業実務研修」というものがあり、最長2年間、年間最大165万円の支援が受けられます。条件付きではありますが、その後も「新規就農者育成総合対策事業(経営開始資金)」という補助金があります。「青年等就農計画認定申請書」を作成し、認定を受けることで、最長3年間、年間最大165万円の支援が受けられます。つまり最長5年間、年間最大165万円の支援になります。金額は記事作成時点のものです。最新の支援制度や支援金額は支援に関するお金各種のページをご確認ください。

Q

どういう方のご相談が多いですか?

30代とか多いですね。会社に勤めてきたけど「やっぱり農業やってみようかな」という方ですね。「ご家族で」という方も多いです。皆さん、ブドウを選ばれるのは「やっぱり美味しいから」ですよね(笑)。

私も「どうして続けて来られたんですか?」って聞かれるんですけど、「ブドウって美味しいじゃないですか」って(笑)。しかもちゃんとやれば、ちゃんと儲かる作物なんです。

蒜山という土地も良いんです。寒暖差があって、昼はしっかりと気温が上がって、夜は寒くなる。ブドウに限らず、野菜でも何でも糖度が上がります。蒜山はトウモロコシが有名ですけど、やっぱり甘さがほかのところとぜんぜん違うんです。

蒜山のブドウ・農業の様子

Q

そう言えば、農業に関する相談も受けられているんですよね?

そうですね。相談もいろいろです。私が農協(現JA)にいたということもあるんですけど、「田んぼにこんな草が生えてるんだけど、どう対処したら良い?」とか、ブドウとは関係ないですけど(笑)。

ブドウでよく聞かれるのは「どんな作業をどの時期にすれば良い?」という段取りについてが多いですね。それに答える講習会をここで開催することもあります。作業の時期はだいたい、私たちはここにいるので、気軽に尋ねて来てもらえたら、と思います。

Q

ありがとうございます。最後に、これから農業を始める方にメッセージをお願いします

とにかくね、蒜山は良いですよ。温暖化が進んで、どこも暑くなっていくなか、蒜山は標高も高くて、まだまだ涼しい。ですから良いものができる。

しかも収穫の時期は、やっぱり楽しい。収穫体験もしているので、「蒜山農業公社」にお気軽に声をかけてください。ちょうど秋頃ですね、やってみたら楽しいと思います(笑)。

自営業というのも良いです。自分のペースでできますから。暑いときは朝早くから作業をして、昼間はしっかり休んだりとか、企業に縛られることはありません。会社で先輩とか上司に叱られることもないですから(笑)。

自分のがんばり次第で、しっかりと儲けも出るので、ぜひ蒜山でブドウをやってみるのはどうでしょう。まずは「蒜山農業公社」に来てみてください。

野尻さん・蒜山農業公社の様子

取材・編集:甲田智之