まにわの農家手帖
金﨑心哉さん

作成日:2026.8.21 最終更新日:2026.8.21

ナス 独立就農 久世

金﨑心哉さん

  • #ナスがメイン
  • #小学生のときの夢は農家
  • #高校卒業後すぐ農家
  • #機械いじりも好き
  • #作業は音楽を聴きながら
ナス 金﨑心哉さん

400

ハウスで育てるナス

150kg

ピークシーズンの朝の収穫

200

1袋3本入りの出荷

Q

農業を始めたきっかけを教えてください

祖父が農業をしていたので、小さい頃からずっと手伝いをしていました。

農業の手伝いが楽しかったというのもありますし、農機具とかの機械が好きだったというのもあります。もう小学生のときの「将来の夢」は、「農家」でした(笑)。中学生のときには、学校へ行くまえに収穫して、帰ってきたらまた農業を手伝って、という毎日でしたね。

ただ、祖父が育てていたのは大きな規模ではなくて。本格的に規模を拡大したのは、自分の代からです。いま、夏はナス・きゅうり、冬はブロッコリーなどを育てているんですが、いまやっているスタイルのほとんどは、自分が始めたものです。

ナス畑に座る金﨑心哉さん

Q

地元「真庭高校」の食農生産科に進まれたそうですね

そうです、食農生産科(※)の一期生です。農家になることをある程度見越して。普通科に行くよりは、農業を学べる学科のほうが良いなと思って選びました。

高校では栽培の基本的なところを学びました。また先生も良くしてくれて。

ただ、高校に入るまえから、すでに自分でかなり農業をやっていたので(笑)。高校の授業では「もっと農業がしたい」と思いながらでした。

※岡山県立真庭高等学校の食農生産科は、農業の基礎基本である安全・安心な農作物の生産・加工から販売までを体験的に学習できる専門科。

Q

学校以外での学びはどうされていたんですか?

YouTubeやネットで調べたり、先輩の農家さんに聞いたりしていました。祖父に連れていってもらったら、出荷場で他の農家さんと顔を合わせるので、そこで情報交換もできて。近所で農業をしている方に聞きに行くこともありました。

先輩に聞くのが一番早い、というのは今も変わらないですね。落合野菜果物出荷組合(※)の先輩農家さんたちには、ナスの管理のことや、薬剤のことなどいろいろ教わっています。

※落合野菜果物出荷組合は、20名弱ぐらいの農家が参加しているグループ。JAではなく、岡山県のスーパーと契約して、直接卸しています。

Q

高校卒業後すぐの独立就農。これは真庭ではじめてのケースだと思うんですが

多分そうだと思います。雇用就農という選択肢もあったんですが、自分でできる自信があったし、人に使われるよりは自分でやりたかったんです。

高校生のときに、地元の先輩農家さんから直接卸せる出荷先を紹介してもらって、そこそこな単価で売れるとわかったんです。「これはやっていける」と確信が持てました。

農地は、近所の方が辞められた耕作放棄地などを借りています。「つくってほしい」と頼まれることも多くて(笑)。ありがたいことに依頼はいまも来ているのですが、一人でできる限界があるので、いまは断っています。

ハウスに置かれたトラクターと作業車

Q

いまはどんな農業をされているんですか?

メインはナスです。ハウスの中に400本、夏野菜として育てています。きゅうりも去年から勉強がてら始めました。冬野菜はブロッコリーと大根が中心です。

ナスを選んだのは、夏に稼ぎやすいというのがあります。ナスが自分に合っているというのもあるのですが。

たとえば、きゅうりは朝晩の収穫が必要ですが、ナスは朝だけでいい。自分のペースでこまめに管理できるのが向いているんだと思います。高校のときからずっとナスをやってきたので、一番よくわかっている野菜でもあります。

ハウス内でナスの生育を確認する金﨑心哉さん

Q

ナスの栽培で大切にしていることはありますか?

「管理を徹底すること」に尽きます。

ナスは枝が4本あって、そこから脇芽が出てくる。花が1個出たら、そこで止めていかないといけない。それをどれだけこまめにやれるかで全然違ってきます。サボったらサボった分だけ、やったらやった分だけ返ってくる作物です。

1日取り逃したら、収穫できないサイズになってしまう。ピークのシーズンは朝だけで150kgを収穫することもあります。1袋3本入りで、200袋以上になりますね。

夏は休みがほぼない。朝取って剪定を丁寧にしておけば晩は休めますが、忙しい時は朝からずっと動きっぱなしです。

ハウスで実ったナス

Q

農業の魅力はどんなところに感じますか?

自由度があるところですね。

繁忙期は野菜に使われる感じで、ぜんぜん自由なんてないんですが(笑)。それでもお昼の時間には家で昼寝をしたり、自分でスケジュールが立てられたり。

一方、農閑期はゆっくりです。しっかりと休む。その働き方の自由度が、農業の魅力だと思います。

また先ほどもお伝えしたんですが、頑張っただけ返ってくる職業というところです。農業は正直なので、やればやるほど稼ぐことができる。それがやりがいにもなっています。

Q

反対に、難しさはどんなところに感じますか?

天候次第というところですね。年々気温が上がっていて、雨の降り方も昔みたいにしとしとじゃなくてドカンと来るか、1か月降らないか、という極端な感じになってきている。それが一番難しいです。

対策としては、ハウスのなかにチューブを引いて灌水できるようにしています。また、薬剤を使って植物にスタミナをつけるようにしています。40度を超えるとナスの花がポロポロ落ちてしまうので、去年はそれでだいぶ苦労しました。今年は管理をより丁寧にして、安定させていくのが目標です。

ナスの実を手に取って確認する様子

Q

真庭で農業をすることの利点はありますか?

いろんな農家さんがいることですね。多様な作物を育てている人たちがいて、若い農家さんも多い。落合野菜果物出荷組合は30〜40代が割と多くて、若手が集まって勉強できる場がある。そういう環境が整っているのが、真庭のいいところだと思います。

農業人口は全国的に減っています。70代、80代の農家さんがどんどん引退していくなかで、反対に言えば、若い人が農業に入ってくるチャンスだと思っています。少なくなったときに残っていれば、価値が出てくるんじゃないかな、と。

Q

新しく農業を始めたい方へ、メッセージをお願いします。

とにかく頑張っただけ返ってきます。

また、農業ってつくるだけでもいけないし、経営ができるだけでもいけない。機械のこともわかった方がいい。全部必要なんですよね。

でもそれを少しずつ積み上げていけば、ちゃんとカタチになっていく。小学生の頃の農家さんになりたいと言っていた自分に伝えるなら、「辞めずにずっと続けてきてよかった」ということです。それがいまの自分の原点ですね。

ナス畑で笑顔を見せる金﨑心哉さん

取材・編集:甲田智之